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無線従事者国家試験における電気通信術(欧文電話 受話)および英会話の発音の癖に関して

無線従事者国家試験のうち、第一級および第二級総合無線通信、第一級から第三級海上無線通信士、航空無線通信士、第一級海上特殊無線技士、航空特殊無線技士の試験では、電気通信術の実技試験(欧文電話の送話および受話)と英会話(リスニング)の試験(航空特を除く)が行われています。これらの試験に関しては、発音に癖があるなどの意見がSNSほかで散見されます。筆者は2019年の3月に行われた第三級海上無線通信士の試験を受験し、前述の電気通信術および英会話の試験を経験しました。この記事では、しばしば言及される発音の癖に関して、その指摘は当たらないという立場から筆者の意見を述べます。

電気通信術(欧文電話 受話)

電気通信術の試験については、無線従事者規則(平成12年3月31日 郵政省令第12号)に定められています。これを見ると、

電話 一分間五十字の速度の欧文(運用規則別表第五号の欧文通話表によるものをいう。)による約二分間の送話及び受話

無線従事者規則(https://www.tele.soumu.go.jp/horei/reiki_honbun/a723520001.html

とされています。具体的にどのように音声が送られてきて、どのような紙に書き取るのかは各自調べていただきたいと思いますが、重要なのは「運用規則別表第五号の欧文通話表」によると定められている部分です。ここでいう運用規則は、無線局運用規則(昭和25年11月30日 電波監理委員会規則第17号)のことを指します。この記事の執筆時点における当該規則の別表第5号がe-Gov上でPDFにて公開されていたので、本ページにもアップロードしました。

これを見ると分かりますが、各アルファベットに対して使用する語および発音が定められています。前述のとおり、国家試験はこの表に従って行われることになっています。

これは私が試験を受けた際の経験ですが、少なくとも2019年3月期の各級海上無線通信士および各級総合無線通信士の国家試験における電気通信術の受話の試験の際に使用された音声は同表の発音に従って行われていました。この試験で使用されていた音声は、男性かつアメリカ英語ネイティブと思われるナレーターによって発音されていたと筆者は認識しています。筆者が受験した回以前および以後の試験において、発音が同表の定めから外れていた可能性を否定することは筆者にはできませんが、以後の試験において、そのようにする必要性は薄いと言えるでしょう。

では、なぜ癖があると認識されるかという理由を若干考察します。

一つ目に、通話表の単語のうち、日本語の語彙としても使用される単語のアクセントが、英語のアクセントと異なる点が挙げられます。例えばHのHOTELですが、日本語としての「ホテル」は「ホ」の後に音の下がり目があります。一方英語の”hotel”は”hòʊtél”のように発音されるのが標準的であり、日本語のアクセントとは異なります。しかし、この英語の発音は通話表に定められている発音と矛盾しません。

二つ目に、一般的な英語のアクセントと異なるアクセントが定められているアルファベットが存在する点があります。PにはPAPAが割り当てられていますが、日本語の「パパ」は一つ目の「パ」の後に音の下がり目があり、英語の”papa”も”pάːpə”のように発音されるのが標準的であることから、これらはおおむね類似した発音であると言えます。一方、通話表に記載されているアクセントを参照すると”pəpά”となっています。これは、日本語と英語それぞれの一般的なアクセントと異なっており、違和感を強める原因になっている可能性があります。

しかし、国家試験は通話表に従って行われることが定められている以上、同表のアクセントが基準となるのは道理です。また、実際に試験で流れる音声も同表のアクセントに忠実ですので、十分に通話表を参照してから試験に臨むことを推奨します。情報通信振興会が販売している「無線電話練習用CD」は同表の発音にほぼ忠実(若干日本語なまりはありますが)なので、これで練習してから臨むとより安心かと思います。

英会話

英会話の試験は、無線従事者国家試験の中でも鬼門としてとらえている方が多いように感じられる科目であり、欧文電話の受信と同様に発音の癖に関する意見を見かけることが少なくありません。筆者が調べた限りでは、この科目に関する詳細な基準は特に見当たらず、以前の記事(無線従事者国家試験実施基準)で開示を受けた無線従事者国家試験実施基準にもこれといった定めはありませんでした。

そのため、これは完全に筆者の私見ですが、少なくとも筆者が受験した回においては、英語の発音は男性のアメリカ英語ネイティブによって、通常の発音で行われたと認識しています。試験会場内での位置取りや音響設備の差異によって、ある程度聞き取りやすさに違いが生じることは考えられますが、しばしば言及される「なまりがある」「ぼそぼそ喋っている」という指摘はあたらないと思います。こちらも、情報通信振興会が販売している「無線通信士(等)英会話CD」や「第一級海上特殊無線技士用 英語CD」を利用して事前に雰囲気をつかんでおくことお勧めします。

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