情報公開制度のことをご存じでしょうか? 国の行政機関が保有する行政文書は原則として公開することになっています。これは、行政機関の保有する情報の公開に関する法律(平成11年法律第42号)(通称「情報公開法」)を根拠としており、同法第1条にはこの法律の目的が次のように定められています。

(目的)
第一条 この法律は、国民主権の理念にのっとり、行政文書の開示を請求する権利につき定めること等により、行政機関の保有する情報の一層の公開を図り、もって政府の有するその諸活動を国民に説明する責務が全うされるようにするとともに、国民の的確な理解と批判の下にある公正で民主的な行政の推進に資することを目的とする。

この法律が、その目的にかんがみて適正に運用されているかどうかという部分については議論があるかと思いますが、この記事ではそこまで立ち入ることはしません。この記事では、同法に基づく手続きによって無線従事者国家試験実施基準を開示してもらったてんまつについて述べます。なお、無線従事者国家試験実施基準の中身については別の記事にまとめたのでそちらを参照してください。https://plustk2s.com/?p=243

情報公開制度について調べると総務省の情報公開制度のページがヒットします。これによると、開示請求書様式に必要な情報を記入して、所定の手数料(300円)を納付すると開示請求を行えることがわかります。開示請求書には、請求する行政文書の名称等を、「請求する行政文書が特定できるよう、行政文書の名称、請求する文書の内容等をできるだけ具体的に記載」する必要があります。今回は、開示請求の対象となる文書の名前が明らかでしたが、事前に確認しておくことにしました。「電子政府の総合窓口」として運営されているe-Govでは行政文書のファイル管理簿を検索することができます。キーワード検索が可能なので、今回は「無線従事者 国家試験」で検索してみました。ところが、ヒットしません。そこで、条件検索から作成・取得年度等を2010年から2020年とし、検索対象の対象を総務省とすると、

こんな感じでヒットしました。無線従事者国家試験実施基準についてはこれより新しいものが検索の結果として出てこなかったので、これが最新のものと判断して開示請求を行いました。

開示請求書には文書の名称として「平成23年度無線従事者国家試験実施基準」と記載し、これ以外の必要事項を記入し、郵便局で300円分の収入印紙を張り付け、特定記録で送付しました。総務省が保有する文書の場合、請求書の送付先は同省情報公開閲覧室でした。7月29日に発送し、翌日には総務省に配達されたようです。そのさらに翌日の7月31日に、総務省から照会の電話がかかってきました。そんな文書は存在しないという趣旨の問い合わせだったのですが、e-Govで検索したら出てきたので存在するはずだというようなことを答えたように記憶しています。これについては、 受付者が当該文書の直接の担当でなければ文書の存在を把握していないことが原因の可能性があります。また、本件の担当者が私と同様にe-Govを使用して検索していたとすれば、私が最初に検索したものと同様の検索結果を見ている可能性もあるでしょう。しかし検索結果として出てきた以上、存在するものは存在するのだと言っておくべきです。

その後、音沙汰がなかったのですが、結局8月17日付で開示することを決定した旨の文書が8月19日に届きました。情報公開法の第10条には、開示請求があった日から30日以内に開示するか否かの決定をしなければならない旨が定められているので、きっちり期限内に収まっています。夏休みもはさんでこのスピードなので、本来業務ではないのにありがとうございますという感じです。届いた文書は以下のようなものでした。総務大臣公印と割印付きの本格的な行政文書が届きます。なお、黒塗りと大臣公印のぼかし処理は私が行ったものです。

この開示決定文書が届いた時点で終わりというわけではなく、どのように文書を開示してもらうかの意思表示をし、実際に開示をしてもらう必要があります。この意思表示は、「行政文書の開示の実施方法等申出書」に必要事項を記入し、手数料を収入印紙の貼付によって納付したものを郵送することで行います。総務省まで出向いて閲覧させてもらったり写しを受け取ったりという方法もありますが、平日にそこまでの時間は取れないので、写しを郵送してもらうことにしました。今回の開示対象の文書はPDFで31ページとのことだったので、CD-Rに焼いて送ってもらうことにします。手数料の計算は若干複雑でしたが、結局10円だけ払えばよいことになりました(郵送料140円は切手を同封して別途支払っています)。ただ、10円の収入印紙が曲者で、それほど需要がないためか在庫している郵便局はそれほど多くないようです。最寄りの郵便局は20円からしか在庫していませんでした。10円の収入印紙のために大きい郵便局に出向くのも面倒ですし、取り寄せてもらうのを待つのも避けたかったので、20円の収入印紙を貼付して申出を行いました。無線従事者免許証や工事担任者資格者証などの申請を行ったことがある方はご存じの、「○○円過納承諾」+押印で済ませる方法です。

申出書の送付先は、開示対象文書の担当部局である総務省総合通信基盤局電波部電波政策課検定制度係でした。8月20日特定記録で送付し、翌日には配達されたようです。そこからはすぐに処理されたようで、8月24日発送、8月25日着でCD-Rが送られてきました。

そして、送付されてきたCD-Rに記録されていたのが、冒頭で述べた無線従事者国家試験実施基準のPDFファイルでした。

このように、定められた手順を踏めば行政文書は開示されるので、興味のある方はやってみてはいかがでしょうか。個人的には、どなたかがほかの無線従事者行政に関する文書を開示してみてほしいと思っているところです。

狭間タスク(JE1JGI)


Task Hazama

@JE1JGI 電波を出すところで電波と関係ない仕事をしている。plus TK2S のメンバー。黒電話と免許集めが好き。保有資格:第一級総合無線通信士・第一級陸上無線技術士・伝送交換主任技術者資格・線路主任技術者資格・工事担任者(総合通信(旧AI・DD総合種))。博士(工学)。

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